原則は「支給しない」。ただし差額は出ます
健康保険法第108条第3項は、こう定めています。
傷病手当金の支給を受けるべき者が、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病につき厚生年金保険法による障害厚生年金の支給を受けることができるときは、傷病手当金は、支給しない。
そのあとに、ただし書きが続きます。障害年金の日額が傷病手当金の日額より少ないときは、その差額を支給するという内容です。
つまり、両方まるごと受け取ることはできませんが、手取りが障害年金の額まで落ちるわけでもありません。 高いほうの水準が保たれます。
日額の出し方
年金は年額、傷病手当金は日額で出ます。比べるために、年金を日額に直します。
| 障害年金の日額 | 年金額 ÷ 360(1円未満は切り捨て) |
|---|---|
| 障害基礎年金もあるとき | 障害厚生年金と合算してから360で割ります |
365ではなく360です。健康保険法施行規則第89条で決まっています。
たとえば障害年金が年126万円なら、日額は3,500円。 傷病手当金の日額が4,000円であれば、差額の500円が傷病手当金として出ます。 障害年金が年180万円(日額5,000円)であれば、傷病手当金は出ません。
「同じ病気」でなければ、調整されません
条文は「同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病につき」と書いています。 別の傷病による障害年金であれば、傷病手当金はそのまま出ます。
うつ病で休職して傷病手当金を受けながら、同じうつ病で障害年金が認められた場合は、調整の対象になります。
障害手当金(一時金)の場合は、考え方が違います
障害手当金は、年金ではなく一時金です。第108条第4項は、 その後に受ける傷病手当金の合計額が障害手当金の額に達するまでは支給しないという形で定めています。
日額を比べるのではなく、総額で見ます。
退職後は、老齢年金も調整の対象になります
退職して傷病手当金を受け続けている場合(資格喪失後の継続給付)、 老齢年金や退職年金を受けられるときも、第108条第5項で同じように調整されます。
こちらは「同じ病気かどうか」は関係ありません。 日額に直して比べ、年金のほうが少なければ差額が出ます。
障害年金は、認定されるとさかのぼって支給されることがあります。 その期間に傷病手当金を受け取っていると、重なった分の返納を求められます。
障害年金を申請中であることは、傷病手当金の申請書にも記入欄があります。 傷病手当金の申請書は、誰が何を書きますか
どちらを先に考えるか
傷病手当金は通算1年6か月で終わります。障害年金は、初診日から1年6か月が障害認定日の目安です。 この2つは、終わる時期と始められる時期が重なります。
調整があるからといって、障害年金の申請を遅らせる理由にはなりません。 高いほうの水準が保たれる仕組みだからです。
ここに書いた内容は一般的な説明です。実際の取り扱いは、加入している健康保険、勤務先の就業規則、お住まいの自治体によって異なります。ご自身のケースは、必ずそれぞれの窓口にご確認ください。
出典
- 健康保険法第108条(e-Gov法令検索)
- 健康保険法施行規則第89条(障害年金の額の算定・360分の1)
- 協会けんぽ「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」(kyoukaikenpo.or.jp)
- 日本年金機構「障害年金」(nenkin.go.jp)
