認められると、何が変わるか
同じように休んでいても、労災と認められるかどうかで、受け取れるものが変わります。
| 受け取れる額 | 労災は給付基礎日額の80%(休業補償給付60%+休業特別支給金20%)。 傷病手当金は標準報酬月額のおよそ3分の2(約66.7%) |
|---|---|
| 期間 | 労災は療養のため働けない間、上限がありません。 傷病手当金は通算1年6か月で終わります |
| 治療費 | 労災は自己負担なし(療養補償給付)。 健康保険なら原則3割の自己負担がかかります |
| 解雇 | 労災で療養のため休業する期間とその後30日間は、 原則として解雇できません(労働基準法第19条) |
額の差だけでも1割以上あります。期間の上限がないことと、解雇が制限されることを合わせると、 差はさらに大きくなります。
傷病手当金で休んでいる場合、就業規則の休職期間が満了すれば 自然退職または解雇となることがあります。
労災と認められている場合は、労働基準法第19条により、療養のため休業する期間とその後30日間は 解雇できないと定められています。休める期間そのものが変わります。
認められる条件
精神障害の労災認定には、厚生労働省の認定基準があります。次の3つをすべて満たすことが要件です。
- 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
- 発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
- 業務以外の心理的負荷や、その人自身の要因によって発病したとは認められないこと
2つ目の「強い心理的負荷」は、具体的な出来事に当てはめて判断されます。 長時間労働、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、重大な事故への遭遇、 配置転換、退職の強要などが挙げられています。
令和5年9月の改正では、顧客や取引先からの著しい迷惑行為(いわゆるカスタマーハラスメント)が 具体的な出来事として追加されました。
待期の3日間は会社が補償します
労災の休業補償給付は休業4日目からです。最初の3日間は労災保険から出ません。
ただし業務上の負傷・疾病の場合、この3日間は会社に休業補償の義務があります(労働基準法第76条)。 自分で負担するものではありません。
傷病手当金とは、同時に受け取れません
同じ病気やけがについて、労災の給付を受けられる場合、健康保険からの傷病手当金は支給されません (健康保険法第55条)。どちらか一方です。
順番としては、先に傷病手当金を受け取っていて、あとから労災が認められることがあります。 その場合は受け取った傷病手当金を返し、労災から受け取り直すことになります。 手続きは増えますが、最終的に受け取れる額は労災のほうが多くなります。
請求のしかた
- 請求先は、勤務先を管轄する労働基準監督署です。健康保険組合ではありません
- 請求書には事業主が証明する欄がありますが、会社が証明してくれない場合でも請求できます。 その事情を記載して提出します
- 時効は2年です(休業補償給付。労働者災害補償保険法第42条)
- 費用はかかりません。労働基準監督署への相談も無料です
「会社が認めないから無理だ」と考えて諦める方がいますが、労災かどうかを判断するのは 会社ではなく労働基準監督署です。会社の同意は要件ではありません。
認定は簡単ではありません
精神障害の労災請求は年々増えていますが、認定される割合は3割前後で推移しています。 請求すれば通るというものではありません。
判断の材料になるのは、勤務記録・タイムカード・メールやチャットの記録・ 同僚の証言・受診の経緯などです。これらは時間が経つほど集めにくくなります。
思い当たることがあるなら、まず労働基準監督署に相談してください。請求するかどうかは、 話を聞いてから決められます。
労災の認定には時間がかかります。その間の生活費が必要な場合は、 先に傷病手当金を申請しておくことができます。あとから労災が認められた時点で調整されます。
「労災を待つあいだ、収入がゼロになる」ということにはなりません。
ここに書いた内容は一般的な説明です。実際の取り扱いは、加入している健康保険、勤務先の就業規則、 お住まいの自治体によって異なります。ご自身のケースは、必ずそれぞれの窓口にご確認ください。
出典
- 厚生労働省「3−5 休業(補償)等給付の計算方法を教えてください。」(mhlw.go.jp)
- 厚生労働省「心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました」(令和5年9月1日/mhlw.go.jp)
- 厚生労働省「精神障害の労災補償について」(mhlw.go.jp)
- 労働基準法第19条(解雇制限)/第76条(休業補償)
- 健康保険法第55条(他の法令による給付との調整)
- 労働者災害補償保険法第42条(時効)
- 勤務先を管轄する労働基準監督署
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