KOKOKARA

うつ病や適応障害で、労災は認められますか

不調の原因が仕事にある場合、傷病手当金ではなく労災の対象になることがあります。扱いがかなり違います。

最終確認日:2026-08-25カテゴリ:休職ガイド

認められると、何が変わるか

同じように休んでいても、労災と認められるかどうかで、受け取れるものが変わります。

受け取れる額労災は給付基礎日額の80%(休業補償給付60%+休業特別支給金20%)。 傷病手当金は標準報酬月額のおよそ3分の2(約66.7%)
期間労災は療養のため働けない間、上限がありません。 傷病手当金は通算1年6か月で終わります
治療費労災は自己負担なし(療養補償給付)。 健康保険なら原則3割の自己負担がかかります
解雇労災で療養のため休業する期間とその後30日間は、 原則として解雇できません(労働基準法第19条)

額の差だけでも1割以上あります。期間の上限がないことと、解雇が制限されることを合わせると、 差はさらに大きくなります。

見落とされやすいのは解雇制限のほうです

傷病手当金で休んでいる場合、就業規則の休職期間が満了すれば 自然退職または解雇となることがあります。

労災と認められている場合は、労働基準法第19条により、療養のため休業する期間とその後30日間は 解雇できないと定められています。休める期間そのものが変わります。

認められる条件

精神障害の労災認定には、厚生労働省の認定基準があります。次の3つをすべて満たすことが要件です。

  1. 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
  2. 発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
  3. 業務以外の心理的負荷や、その人自身の要因によって発病したとは認められないこと

2つ目の「強い心理的負荷」は、具体的な出来事に当てはめて判断されます。 長時間労働、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、重大な事故への遭遇、 配置転換、退職の強要などが挙げられています。

令和5年9月の改正では、顧客や取引先からの著しい迷惑行為(いわゆるカスタマーハラスメント)が 具体的な出来事として追加されました。

待期の3日間は会社が補償します

労災の休業補償給付は休業4日目からです。最初の3日間は労災保険から出ません。

ただし業務上の負傷・疾病の場合、この3日間は会社に休業補償の義務があります(労働基準法第76条)。 自分で負担するものではありません。

傷病手当金とは、同時に受け取れません

同じ病気やけがについて、労災の給付を受けられる場合、健康保険からの傷病手当金は支給されません (健康保険法第55条)。どちらか一方です。

順番としては、先に傷病手当金を受け取っていて、あとから労災が認められることがあります。 その場合は受け取った傷病手当金を返し、労災から受け取り直すことになります。 手続きは増えますが、最終的に受け取れる額は労災のほうが多くなります。

請求のしかた

  • 請求先は、勤務先を管轄する労働基準監督署です。健康保険組合ではありません
  • 請求書には事業主が証明する欄がありますが、会社が証明してくれない場合でも請求できます。 その事情を記載して提出します
  • 時効2年です(休業補償給付。労働者災害補償保険法第42条)
  • 費用はかかりません。労働基準監督署への相談も無料です
会社を通さなくても請求できます

「会社が認めないから無理だ」と考えて諦める方がいますが、労災かどうかを判断するのは 会社ではなく労働基準監督署です。会社の同意は要件ではありません。

認定は簡単ではありません

精神障害の労災請求は年々増えていますが、認定される割合は3割前後で推移しています。 請求すれば通るというものではありません。

判断の材料になるのは、勤務記録・タイムカード・メールやチャットの記録・ 同僚の証言・受診の経緯などです。これらは時間が経つほど集めにくくなります。

思い当たることがあるなら、まず労働基準監督署に相談してください。請求するかどうかは、 話を聞いてから決められます。

迷ったときの順番

労災の認定には時間がかかります。その間の生活費が必要な場合は、 先に傷病手当金を申請しておくことができます。あとから労災が認められた時点で調整されます。

「労災を待つあいだ、収入がゼロになる」ということにはなりません。

確認してください

ここに書いた内容は一般的な説明です。実際の取り扱いは、加入している健康保険、勤務先の就業規則、 お住まいの自治体によって異なります。ご自身のケースは、必ずそれぞれの窓口にご確認ください。

出典

  • 厚生労働省「3−5 休業(補償)等給付の計算方法を教えてください。」(mhlw.go.jp)
  • 厚生労働省「心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました」(令和5年9月1日/mhlw.go.jp)
  • 厚生労働省「精神障害の労災補償について」(mhlw.go.jp)
  • 労働基準法第19条(解雇制限)/第76条(休業補償)
  • 健康保険法第55条(他の法令による給付との調整)
  • 労働者災害補償保険法第42条(時効)
  • 勤務先を管轄する労働基準監督署

休職を経験され、そのあとの経過を共有してもよいという方を探しています。 当事者の記録について