入るのは、寝る1〜2時間前
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」の記述です。
寝室は暑すぎず寒すぎない温度で、就寝の約1〜2時間前に入浴し身体を温めてから寝床に入ると入眠しやすくなる。
理由も書かれています。入浴で手足の末梢血管からの放熱が促進されて深部体温が低下し、入眠が促進される。 加えて副交感神経が優位となり、心身の緊張を緩和する効果があると考えられている、という説明です。
就寝の1〜2時間前という時間帯が、根拠のある部分です。寝る直前ではありません。
ただし、熱すぎると逆に働きます
同じガイドのQ&Aに、次のやりとりがあります。
Q 冬はからだが冷えるので、熱い風呂に長く浸かるようにしていますが、問題ないでしょうか?
A 就寝の約1〜2時間前の入浴は、入浴後の熱放散を促進し、入眠を促す効果が期待できますが、 極端に湯温が高いと、交感神経の活動が亢進し、かえって入眠を妨げる可能性もあります。
サウナは、この「極端に湯温が高い」の側に位置する温度です。 入浴に根拠があることは、そのままサウナの根拠にはなりません。
サウナは、国の資料に出てきません
厚生労働省の「身体活動・運動ガイド2023」「睡眠ガイド2023」で推奨事項として扱われているのは、 運動・睡眠・入浴までです。サウナはそこに入っていません。
国の資料でサウナに触れているのは、消費者庁の事故に関する注意喚起です。 「サウナ浴での事故に注意 ― 体調に合わせて無理せず安全に ―」(2024年6月5日公表)。
| 事故情報の登録件数 (2024年4月末時点) | 78件・受傷者82人 |
|---|---|
| やけど | 31件 |
| 切り傷・擦り傷等 | 24件 |
| 骨折・打撲 | 14件 |
消費者庁のアドバイスは6項目です。
- サウナ室の出入りでの急な行動に注意する
- 温度に体を慣らすことを意識する
- 体調に異変を感じたら、すぐ周囲の人か従業員に知らせる
薬を飲んでいる場合について
向精神薬とサウナの組み合わせについて、公的機関が出している一律の基準は見当たりませんでした。 「危険です」とも「問題ありません」とも、このサイトからは書けません。
確認先は決まっています。処方を出している主治医か、薬を受け取った薬局の薬剤師です。 薬剤師には、処方箋を持っていかなくても相談できます。
聞き方の例:「この薬を飲んでいるあいだ、サウナや長風呂で気をつけることはありますか」
研究のほうには、報告があります
国の健康づくりのガイドに出てこないことと、研究が何もないことは別です。 査読を経た報告は、いくつかあります。
サウナ(フィンランド)
クオピオ虚血性心疾患研究(KIHD)という長期の追跡調査があります。 42〜61歳の男性2,138人(開始時点で精神疾患の既往なし)を 中央値24.9年追跡し、期間中に203件の精神病性障害が記録されました。
サウナの頻度は、週1回が537人、週2〜3回が1,417人、週4〜7回が184人。 頻度が高いグループほど、精神病性障害の発症が少ないという関連が報告されています。
入浴(日本)
日本にも、高齢者を対象にした6年間の追跡調査があります。 冬に浴槽入浴を頻繁に行う人で、新たな抑うつの発症が有意に少なかったと報告されています。 温熱作用による自律神経の調整や、睡眠の改善が関わっている可能性が考察されています。
ただし、そのまま当てはめられません
理由が3つあります。
| 観察研究です | サウナに行く人と行かない人を比べたもので、 くじ引きで振り分けた試験ではありません。もともと元気な人がサウナに行っている可能性を 排除できません |
|---|---|
| 対象が違います | フィンランドの中高年男性と、日本の高齢者です。 休職中の30〜40代に、そのまま当てはまるとは限りません |
| 見ているものが違います | サウナの報告は精神病性障害の発症、 入浴の報告は抑うつの発症です。同じものを測っていません |
だからこのページでは、「こういう報告がある」ところまでを書いています。 厚生労働省が推奨事項として数値を出している 運動や 朝の光とは、確かめられている度合いが違います。
リラックスできることは、資料にも書かれています
「気持ちよかった」は体感の話に見えますが、睡眠ガイドはその中身にも触れています。
入浴により手足の末梢血管からの放熱が促進され、深部体温が低下し入眠が促進される効果に加えて、 自律神経制御系において副交感神経が優位となり、 心身の緊張を緩和するリラクゼーション効果によるものと考えられています。
ぬるめの湯にゆっくりつかると、寝つきも良く、睡眠も深く、主観的な睡眠の質も良くなる、とも書かれています。 「自律神経」も「リラックス」も、公的な資料に出てくる言葉です。
ただし同じガイドは、方法の向き不向きにも触れています。
全ての人に効果が保証されたリラクゼーション法はないということです。 ある人に極めて有効な方法でも、他の人にはむしろ興奮を促し、眠りを妨げる可能性もあります。
合う人と合わない人がいる、というだけの話です。
月に何回まで出せますか
入浴施設の利用料は自費です。週に何回、いくらまでなら続けられるかは家計の話になります。
傷病手当金は給与のおおよそ3分の2で、社会保険料と住民税はそのまま引かれます。 お金を整理するで、毎月の過不足を出したうえで決められます。
ここは治療のページではありません。体調そのものの判断と、いつから何を始めるかは主治医の領域です。服薬中に気をつけることは、処方元か薬局の薬剤師にご確認ください。
出典
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」良質な睡眠のための環境づくりについて(mhlw.go.jp)
- 消費者庁「サウナ浴での事故に注意 ― 体調に合わせて無理せず安全に ―」(2024年6月5日公表・caa.go.jp)
- Laukkanen T, Laukkanen JA, Kunutsor SK. Sauna Bathing and Risk of Psychotic Disorders: A Prospective Cohort Study. Medical Principles and Practice. 2018;27(6):562-569
- 早坂信哉ほか「高齢者における入浴習慣と抑うつ発症の関連」(日本温泉気候物理医学会雑誌)
- 主治医、および調剤を受けた薬局の薬剤師
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